サクラ大戦25周年を勝手に応援!「アニメで究めろサクラ道!」00:アニメから始めるサクラ大戦入門

 2019年末のゲーム「新サクラ大戦」発売に始まり、2020年に同作のアニメ版と舞台版、そして同年末にソシャゲ「サクラ革命」がスタート。最近のサクラ大戦の怒涛の展開は、ファンでなくとも印象に残っているだろう。そして2021年は25周年の記念イヤー。何も起こらないはずはない。このビッグウェーブに乗り、私もここaninadoで、サクラ大戦のアニメ作品について連載させてもらうことになった。

 あなたがもしサクラ大戦に触れたことがなく、しかし興味はあるとしたら、ハマるタイミングとして今以上はないはずだ。ちょっと沼の深さをのぞいてみたいと思ったら、まずアニメから入ったらどうだろう。今回は連載のイントロダクションとして、主にサクラ初心者向けに、「サクラ大戦はアニメから見るべき!」と理屈をこねてみたい。その後で、入門におすすめの作品も紹介する。

サクラ大戦はアニメから見ろ!

 サクラ大戦は多彩なメディアミックスを行なってきたシリーズであり、ゲーム、アニメ、ドラマCD、音楽CD、小説、舞台、ラジオ、マンガ、様々な形態の作品がある。その中でも特に、アニメこそが入門に最適だと、敢えて言いたい。

 理由の一つは手軽さだ。サクラ大戦のメインストーリーはあくまでゲームシリーズで展開されているから、「サクラ道」を究める覚悟を決めたら、ぜひ初代から順にプレイしてほしい。が、とりあえずどんなもんか見てみたい人には、とてもこの道は勧められない。というのも、現在旧シリーズを現行ハードで遊ぶ方法は存在しない。例えば特に評価の高い「サクラ大戦3」をプレイする場合、まず動くドリームキャストを用意する必要がある(あるいは、プレミア価格でPS2版かPC版を購入するか……)。最新作「新サクラ大戦」ならPS4で遊べるが、それにしたって時間とお金がかかる。これに対してアニメであれば、多くの配信サイトで見放題作品に含まれているし、youtubeでは各OVAの第1話が無料公開されている。時間的にも、1話30分ほどで気軽に楽しめる。そこで面白いと思ってもらえたら、ゲームに進んで貰えばいい。

 そしてもう一つの理由は、サクラ大戦というコンテンツにとって、アニメという媒体が特別な意味を持っていることだ。実はサクラ大戦は、アニメが出自のゲームと言っても差し支えないのである。

サクラ大戦はもともとアニメだった

 既に述べたように、サクラ大戦のストーリーは主にゲームシリーズで展開されてきた。そして実は、ゲームとしてのサクラ大戦は、「遊べるアニメ」として設計されている。初代「サクラ大戦」の企画書から、実際のゲームにも採用された要素を引用してみよう。

主題歌付きオープニング
テレビアニメを思わせるオープニングはもちろんテーマソング付きのアニメーション。しかも物語中盤からはストーリー展開にあわせてオープニングテーマも新バージョンに変更される。

各話毎に次回予告
各話終了毎に次回予告を挿入し、その後のストーリーを思わせぶりに提示し、プレイヤーをストーリーにのめりこませます。(以上、「太正浪漫グラフ」より)

 このほか、各所で挿入されるアニメムービー、人間ドラマと戦闘がアイキャッチ(セーブポイント)で繋がれる各話の構成、途中で発生する後継機への乗り換え、セル画風のグラフィックと、「サクラ大戦」は(ロボット)アニメ的な形式を意識して取り入れている。企画段階ではなんと、1クール分の全13話を制作し、各話毎にED映像を挿入、果ては嘘CMまで流す案もあったという(「サクラ大戦クロニクル」伊井俊一インタビュー)。

 また内容面で言っても、サクラ大戦はアニメ、特にOVAを思わせるものになっている。初代「サクラ大戦」が発表されたのは1996年。前年にはTVアニメ『エヴァンゲリオン』とアニメ映画『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』があり、翌年にゲーム「FINAL FANTASY VII」が発売されている。「世紀末」華やかなりし頃、美少女がロボで悪人を退治する「サクラ大戦」は、やや古臭く映ったはずだ。その古臭さは、「サクラ大戦」が80年代OVAのノリを引きずっていることに由来する。

 80年代は、『宇宙戦艦ヤマト』『機動戦士ガンダム』などの作品によって顕在化したアニメファンが制作側にも参入し、ファンのニーズと作品の距離が近づいた時代だった。OVAではアニメファンにターゲットを絞って、「みんなが大好きなもの」をてんこ盛りにした作品が次々と送り出された。いわゆる「メカと美少女」である。「サクラ大戦」は90年代に、「メカと美少女」の快楽主義をやった作品のひとつなのだ。

 80年代OVAを代表する作品であり、かつ「サクラ大戦」のわかりやすい祖先として、87年開始の『バブルガムクライシス』がある。ブレードランナー的な未来社会で、美女4人(うち一人はロックバンドのボーカルだ)がパワードスーツに身を包み、暴走するロボットを仕置していく。『バブルガムクライシス』のブレードランナー的SFと美少女チームに、さらにオカルトを足したような『サイレントメビウス』(マンガが1988年スタート。91・92年に二度アニメ映画化、98年からTVアニメ化)を中間地点に置くと、さらに系譜関係がわかりやすいだろう。

 そういうわけで、アニメ(特にOVA)は、サクラ大戦にとっての「実家」なのだ。アニメのサクラ大戦こそ本流、と言って言えないこともないのである。

サクラアニメはここから見ろ!

 で、具体的にどれから見たらよいかという話になる。

 サクラ大戦のアニメは、登場する華撃団によって、帝都花組(ゲーム版1-2に登場)、巴里花組(3に登場)、紐育星組(5に登場)、新帝都花組(新に登場)、と分けられる。帝都と巴里は複数の作品があるが、帝都ならOVA『轟華絢爛』、巴里ならOVA『ル・ヌーヴォー・巴里』が、単体の作品としては見やすい。適当にググってみて、特に興味を持てるキャラクターがいたら、そのキャラクターが所属している華撃団が登場する作品から見始めるといい。特に気になるキャラクターがいないなら、サクラ大戦のイメージを作った初代華撃団・帝都花組の作品がおすすめだ。

 変わったアニメが好きな人なら、同じ帝都花組でもTVアニメ版『サクラ大戦』から入ってみるといいかもしれない。この作品は、「躁」なゲーム版に対して、かなり「鬱」であり、サクラ大戦としては異色、単体としても万人がスカッと楽しめる内容とはとても言えない。しかし、あの伝説的デジタルオカルトアニメ、『serial experiments lain』の中村隆太郎が監督を務めており、彼ならではのホラーなセンスが炸裂している。お話も他作品から完全に独立しているので、入りやすいはずだ。

 もちろん、これからの私の連載記事も、作品選びの参考にしてみてほしい。ぜひともあなたに、サクラ大戦とのよい出会いがあらんことを。

サークル夜話.zipによる幻のC98新刊、サクラ大戦評論本『〈サクラ大戦の遊び方〉がわかる本』は各委託書店・電子書籍販売サイトにて発売中。本記事を書いた新野安も編集・執筆で参加している。

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新野安
新野安(あらの・いおり)。1991年生まれの兼業ライター。サークル「夜話.zip」にてエロマンガ評論本を編集・執筆するとともに、『ユリイカ』『フィルカル』『マンガ論争』に寄稿。サクラ大戦のファンでもあり、2020年に『〈サクラ大戦の遊び方〉がわかる本』を発行した。推しはアイリス・ロベリア・昴・初穂・舞台版アナスタシア。